9/1〜3に行われた「16th東京Jazz」に山下さんが出られ、その放送が10月から3週に渡って放送されるというので、番組は全て録画していました。
今回、山下さんと渡辺香津美さんたちの「寿限無2017」が出演するというので楽しみにしていました。山下さんはビックバンドとのセッションもあり、1週目に放送され、これももちろん楽しめましたが、2日目にやったはずの「寿限無2017」が2週目終っても放送されず、もう放送は無いかと思いました。
でもしっかり3週目の、番組的には「大トリ」に登場して、ガンガンやってくれました。あの2ヶ月前に一緒の舞台にいた山下さんが日本のジャズ界のトリとして出てくれたことは、嬉しかったと同時にとても誇らしかったです。
さすがにラップの入った寿限無は圧巻で凄かったです。僕的にはピアノの音量バランスをもっとあげて欲しかったですが。
よく考えたらラップもハナモゲラも印象的に近い所がありますね。
とにかく少なくともジャズでも世界のどこにもないスタイルを山下さんは打出せると思いました。
恐らく最もインパクトのあるステージだったので、NHKも最後に持ってきたのでしょう。渡辺貞夫さんもチックコリアも差置いて。
今年の7/29にオリンピックセンターで10年ぶりにロバの音楽座と山下さんの「もけらもけらコンサート」を終えて、その興奮は未だに身体に残っています。
90年代は20ステージくらい色んな所でご一緒しました。その都度めちゃくちゃ面白いという評価を沢山得ましたが、このアンマッチ的な組合わせの面白さはとても説明できるものではなく、観た人も人に伝えるのは困ったと思います。
手前味噌で凄いなと思うのは、これは子どもも楽しめるコンサートなのです。
知合いがFBで 「親子連れが先の予定があって子供が親に連れだされていたんですが『いやだーまだ見たいー』って泣きじゃくってました。子供にとってはけっこう長いプログラムだと思うのですが、流石だなと思いました
そう言ってくれました。
今回改めて、様々な方々から面白いと評価を受けました。
我々も山下さんも歳は取りましたが、ますますパワフルになっていくような気がします。
僕が思うに、山下さんと一緒に演奏して何が面白いか、「寿限無2017」の演奏風景を見て改めて思いましたが、最後の曲をやり終えて終った瞬間の達成感が必ずあるのです。これは他のミュージシャンはここまで多くありません。
もう一つは人間的な配慮がとても細かい方です。それは演奏にも現れて、ガンガン攻めてくる割りに、ちゃんと相手のやる事も包込んでくれるのです。だからかどうだか、音はとてつもなく暖かい響きがするのです。
ミュージシャンで山下さんを闇雲に大きな音を出す人だと勘違いして居る人が多いのかも知れませんが、実はエキサイティングな音の後にやってくるppはその落差もありやわらかく暖かい響きがします。
僕は80年代、ロバの音楽座を始める前から山下さんのオケアレンジを随分と任されていました(山下さんも僕も作曲の溝上日出夫先生の門下同士という縁で)。
山下トリオのテーマは短いですから、オケのやる事は色々そう策する部分が多いのです。色んな面白い事をやり、その中で使ったリズムから「クルディッシュダンス」が生れたりしました。
未だに「勉強やパクリの源泉は、上野さんですからね!オケと一緒にやる試みも上野さんが先鞭をつけてくれました。」と暖かく立ててくれます。
いえいえ結局の所、山下さんは文章でも話でもそうですが、坂田明氏や周りにいる人たちを大騒ぎさせて、その面白い部分を捕まえては拡大して話のネタにして、あの素晴しいエッセイが生れてくるわけですから。山下さんが拾い上げなければただの飲み会かも知れません。
音楽は生まれてくると言うより、拾ってくるものだと僕は思っています。その欠片を構築して形を作ることが作曲であり、ジャズであり、音楽を作る基本姿勢だと思います。
最近、山下さんは声楽家の本島阿佐子さんと「メモディーズ・オブ・メロディーズ」(グリーンフィンレコーズ)という童謡ばかり集めたアルバムを出しました。本島さんと言えば笙の東野珠実さんとの企画で一度ロバハウスで一緒に中世の音楽など録音した、ちょっと異色の声楽家であります。
声楽家とのCDは恐らく初めてではないかと思います。そういうチャレンジもどんどんしていきますね。
昔の童謡ばかりですが、本島さんは極めて声楽家として歌い、山下さんはジャズで伴奏をしています。
このジャズの伴奏がとてもジャズの初心に返ったような、もともとこういったフレーズが好きだったからジャズを始めたのかなと思うような、そんな原点を楽しんでいるような伴奏をしています。
特に野口雨情あたりのものはとても共感します。
谷川俊太郎さんもそうですが、とにかくこのクラスの世界から注目される方々は心から優しさを持っている方だと思います。
パワフルであり、だれがどうしたとか失敗したとかでは無い、(男女の愛ではないですが)一緒になって演奏を終れ、本当に一緒に演奏して良かったと思えるそんな音楽の至福のひとときを共有できるのです。