個の力が圧倒的に及ばない相手でも、知恵と力を合わせれば勝てる。そんな当たり前の事を思い知らされたパシュートの日本チームだった。
年間300日以上を生活を共有しシンクロしてきた彼女たち。すでに3度も世界記録を塗替えていたが、これほどメダルを取らせてあげたいと思ったチームはない。それだけに今回ばかりは自分のことのように喜べた。
日本チームは「一糸乱れぬ隊列」と言われるほど、後方の選手の空気抵抗を極限まで削り取り、一人で1500mを走るのでは到底得られない速さを生む。ここでわざわざ取上げるまでもないが、驚くほど時間を削るための工夫が成されてきた。

パシュート女子
 

「一糸乱れぬ隊列」は響き的に軍隊的で、個性の欠如を表しているようで悪印象だが、僕はここに音楽で言うハーモニーを連想した。 ハーモニーの場合は同じ口の開け方、同じ音量バランス、振動数が割りきれる音程感、これが一人で歌う何倍もの響きや音量を生み出し、人の心に深く入り込む。この統一された美は単に聖歌隊等が歌う天使の声だけでなく、個性豊かなビートルズやクイーンなどが代表するロック、こういったグループの決め手にもハーモニーは重要なアイテムとなっている。 ビートルズの映像を見ても解るように、口の開け方、音量バランス、もちろん音程を含めかなり一糸乱れぬ状態でハモっている。それとは別にソロをとる時はそれぞれの個性の中で自由な口の開け方で歌う。

我々の2月の北海道公演の最後は高木姉妹の出身地、幕別町だった。素晴しい公演となった。どこも「頑張れ美帆、奈那」の垂幕だらけだった。
金銀銅と金×2を手にしたこのスーパー姉妹がメダルを取る度に、地元の人が集っている映像が映った。我々が公演をしたホールだ。
僕は何度も何度も映し出される度に「ここのホールで公演したんだよ!」と家族に誇らしげに語った。

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