演奏は「ロバハウス」となっていますが、当時ゲームが子どもたちにどのような影響を与えるか、色々問題視されていた時期でもありました。なのでプロフィール等にはあまり大きく取り上げていませんが、我々はこの仕事に多くの時間を割いてしっかりとしたものを提供してきたと思っています。
僕自身もコミックやアニメ好きなオタク的な所はありますが、ゲームは殆どやったことがなく、否定的でも肯定的でもありません。ただ、過ぎたるは及ばざるがごとしで、やり過ぎはお酒でもテレビでもSNSも害はもたらすという考え方でした。
この仕事に意義を感じたのは谷岡さんを始め、スタッフの方々の真面目な取組み、ロバの音楽を好きになり、コンサートに足を運び古楽器と真面目に向合い、ゲームの世界がそこにあるならこの世界を素晴しい景色にしたいというその熱意に動かされました。
録音はロバハウスで半年近くかけてやったと思います。前後して「パンツぱんくろう」の録音もしていた頃でした。
当時のキューブは直径8cm光ディスク 約1.5GBの中に映像やプログラム、サウンドまで1枚にゲームの全てが収録されるメモリとの鎬合いの世界で、基本のガイドや伴奏は電子音で生の古楽器の音をメロディや特徴的な伴奏に重ねて録っていくやり方でした。
楽器の指定から解釈はかなりお任せの状態でデータを頂いていたので、スタッフさんたちを唸らせたい一心でかなり色々こちらのアイディアを盛りこみました。
音楽的にもこちらもだんだん谷岡さんの音楽語法の世界に馴染んできて、やっていくうちに「ああ、こういったサウンドを求めているんだ」というのが解るようになってきました。
もともと古楽器は音の個性はそれぞれ魅力的ですが、全ての音階が出しやすいわけではなく、転調に弱く、音域も狭く、現代楽器のように何でも可能ではないのです。それを遣り繰りして聴かせられるものを作り上げるプロセスは、一般の方には説明出来ないところだらけです。
我々はゲームをやらないのでゲーム機では体験できなかったですが、サウンドトラックで並べて聞いた時はトラッド調であり、古楽風であり、活劇風であり、ホットであり、馴染みやすくとても聴きやすく新鮮な音楽でした。
今回、この「FFCCリマスター」が復刻版のように発売され、それに合わせて「リマスターサウンドトラック」が発売されました。多くは当時の音のリメイクが多いですが、新たに何曲か録音しました。
CD紹介のページの最下部で試聴できますが、音は素晴しく良くなり、どこまでがPCの音でどこが古楽器と言った境目も薄くなり、とにかく気持よく聴けます。初版は3枚組みになりますが、押し並べて聴いてみるとこれだけそれぞれの音が明瞭に出てくるロバの音源もそんなに多くなかったなあと思えるほど、楽器の特長が良くでています。
最近当時FFCCやった子どもたちが大人になってロバハウスに良く訪れます。ロバの舞台を知らないで音だけを求めてやって来た当時の子どもたちが、ロバのHPなどにもFFCCのこの音に出遭って良かったという感想を書込んでくれます。