太陽劇団の「金夢島」観ました
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前回日本に来た時の「堤防の上の鼓手」は文楽を生身でやるような演出でしたが、今回能や狂言、歌舞伎をはじめ、ありとあらゆる日本の文化を表現に取り入れた、美しく何か込み上げてくる様な感動がありました。
1人の療養中の女性がベッドの中で日本を想い妄想する、恐らく舞台はこの病室から一歩も出ていないのだろうが、その白日夢に現在の世界のあらゆる事が展開され、凝縮されています。
今回この3時間越えの芝居が終わった後、特別に約1時間近く、ムヌーシュキンさん(今年84歳)を囲んだ交流会+この作品に思いと質疑応答がありました。実に8割のお客さんが帰らずに残って話しを聞きました。感想は皆素晴しい舞台でしたと言うのですが、なんか質問内容は「日本文化は雅楽などもあるけどそういったものは取入れないのか」とか「表現にあえて携帯電話をなぜ使うか」とか、通ぶった概念的な質問が多く、もっと太陽劇団自体の活動のことを聞きたいと思いました。
どれも答えに困るような内容が多く答えるのにとても時間がかかり、もう少し時間があれば僕だったら団員の音楽面の事を聞きたかったです。今回団員が歌う歌がどれも素晴しく、例えばビートルズの「ビコーズ」を3人の女性が生のヴィブラフォーンを伴奏に(ほぼアカペラのように)歌ったのですが、これが本当に演劇畑の人達のコーラスかと思う程精度の高い素晴しいものでした。またアラビア語の素晴しい歌や、日本の謡を真似たようなその歌唱力に驚かされ、この様な音楽的素養は元々持って劇団に入ったのか、また劇団に入ってから色々な経験を積むうちに身についたのか、そんなことを聞きたかったです。
今回、異常な量の各国の民族楽器等を持込んで演奏していた、音楽担当のジャン・ジャック・ルメートルの姿はありませんでした。劇に音を付ける彼の姿勢に自分を投影していたところもあります。それだけは残念でした。
うちの奥さんなどは「訳がわからない部分が多い」などといっていましたが、話しを追えば何でそこはそうなるのか解らない部分も多いと思います。まあ僕なんかは言いたかったこと、なぜそこにそうなるとか、そんなことより、「ああ、こう表してきたか?」「おお、こう来るか?」それとフランス語の台詞の綺麗なこと、そこに日本語が絡んでくる面白さ、ある意味取り合せの面白さがたまらない部分があります。
最後に能の舞を踊りながら、アメリカの古いスタンダードが流れ歌われますが、恐らく元の歌に団員達の下手だけど一生懸命に声を出して歌っているその歌が何とも始めて味わう化学反応で、なぜか泣けてきます。途中に一度歌われましたが、最後はこれで締めるかなと思っていましたが、それは見事的中しました。