Tessey Ueno's blog

古楽系弦楽器を演奏する上野哲生のブログ。 近況や音楽の話だけでなく、政治や趣味の話題まで、極めて個人的なブログ。

2025/02

ミュージカル「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」とても評判良く、2年目で再演です。
今年はとちぎテレビの主催でとちぎテレビで放映もされます。
原作のいわむらかずおさんが亡くなられたばかりで、追悼の気持で精一杯心を込め気持を一つに稽古に邁進しています。
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25年版「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」ソング・アラカルトというプロモ的なものを作りました。
宇都宮文化会館大ホール公演事前動画。本番35日前のリハを歌を中心に録りました。
今回のリハは衣装も照明も生オケもなく、振付けも指導中です。写真は2年前の初演の時のもので、動画は今回のものです。歌を中心にアラカルトしています。
あらかじめ音楽を耳に馴染ませておいてから本番を観ると、より楽しく観られると思いこの動画を作りました。茂木の方々、栃木の方々の素晴しい歌声をお楽しみ下さい。
(YouTubeから入るとチャプターが付いて好きな歌にジャンプします。)





特に最後の「 ♫同じ夢の中で」はぜひ覚えていただき、ぜひ一緒に歌って下さい。
最後のゲネプロのアンコールの
「 ♫同じ夢の中で」のリハです。皆さんの思いが伝わってきます。

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「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」
原作・絵本:いわむらかずお
脚本/演出:江藤 寛 作曲:上野哲生
音楽総監督:黒子和志  副監督:豊田尚史  振付け・指導:小川和代
特別出演:村山哲也  小倉伸一  村山啓子  小川和代ジャズダンスカンパニー 
制作・出演:もてぎde演劇を創る会  代表:都野祐俊 
写真提供:鶴田さとみ  録音・動画編集:上野哲生


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とちぎテレビで放映もありますした。生演奏の小オケが付きます。
小林清美(Pf) 栗田智水(Fl) 大塚裕一(Perc) 八溝山アンサンブル





大河ドラマは久々に江戸の中期が舞台になったが、主役ではないが初回からよく登場する平賀源内はこの時代の最も興味のある人物だ。

源内
この博物学に長け、蘭学に長け、絵画はハンパない洞察を持ち、小説を書かせれば面白い、発明とは言えないがエレキテルのようなものを作ってしまうし、コピーライターや企画者としては至る所に現代まで残るものを考案するマルチクリエーター的な存在は、万能の天才=レオナルド・ダ・ビンチを彷彿させる。
エレキテル

ルネサンスにはダ・ビンチ以外に、ミケランジェロ、デュラー、マキャベリみたいなマルチな才能を持つ人間は多く居たが、日本でも源内まで有名ではないが源内を超えるとまでいわれる柳沢 淇園(やなぎさわ きえん)通称=柳里恭という人物もいる。博学にして多芸多才であり武芸百般に通じて、文武・諸芸に優れ、篆刻・煎茶・琴・笛・三味線・医術・仏教など、武は剣術・槍術・弓術・馬術・指揮法までこなし、人の師なったのは16項目もあったとされていたらしい。
室町時代の水墨画家である能阿弥も連歌師、表具師、鑑定家でもありマルチな才能の持ち主で、座敷飾り、茶道、華道、香道など日本文化の礎となっており、彼がいなかったら千利休もいなかったかもしれないとまで言われている。
その昔は安倍晴明や空海もマルチクリエーターと言えるだろうし、現代では戯曲、演技、ダンス、音楽、映画までほぼ一人の発想で作り上げたチャップリンは個人的には最も尊敬する。
現代においてこう言ったマルチ人間は少なくなった。分業化が進み専門家は持て囃されるが、2足以上ののわらじを履くような人は大成が難しい。野球界だって大谷のような「投げる」「打つ」「走る」全てが一流なマルチプレイヤーをなかなか認めてこなかった。現代ではどちらかと言えば頑なな職人気質の方がどうしても上で、梶原一騎の原作のように○○一筋というのが、近代の美学のようだ。
音楽界は多くの場合作曲家、作詞家、編曲家、歌手、演奏家は大概の場合別々だ。音楽業界はこれにプロデュース、録音、映像、デザイン、配信など色んな要素が加わる。
それでも最近の音楽業界の変化は、ミュージシャンがこれらを一人でこなす、いや、こなさざるを得ない事が多くなった。無名のミュージシャンが売れるためにはPCを使いこなし、一台で曲づくりから録音、配信までそれらを全て一人でやるところから始めてプロミュージシャンになっていくスタイルが多い。米津 玄師、ADO、YOASOBI、Mrs. GREEN APPLE.挙げればキリが無い。PC=パーソナルコンピューターはそういった意味で時代を変えた。
衆鱗図
自分もマルチな音楽家だと思う。音楽をやっていれば色んな楽器を触りたくなる。曲を作ってみたくなればそれを録音して自分の好みのミキシングで人に聴かせたいと思う。映像付きなら尚更面白い。結局、人間の興味は次から次へと数珠繋ぎのように尽きることがない。自分がもう少し売れっ子であれば好きなだけ金をかけ、時間をかけ、ジャンルやカテゴリーに拘らない、一人で自由なものを生みだしていたかも知れない。
でも結局、平賀源内も自由に色んな事をやりたいがそのための金はなく、逆に借金に追われ、帰って不自由になり凶運にも見舞われ、その焦りと不安定な精神から人を殺めてしまう。
悲しいかな、源内の場合は殆どの業績が中途半端な形でしか残せなかった。何枚かの絵と戯曲、そして「土用の鰻」くらいかもしれない。源内がもし現代のPCを一台持っていたら、あらゆる情報をストックし、大量の研究資料も作品も自己流で配信し、日本の産業や方向性も大きく変えていったに違いない。それでも彼のイノベートな生き様が江戸人に与えた影響は大きかったと思う。
あれだけ発明好きで様々な分野で新しいものを作ってきた日本人は、現代ではイノベーション指数が世界で13位というくらいに落ちた。これから日本を救う人間は源内のようなマルチな興味と視点を持った人間をサポートして行くことが大事だと思うのだが。

司馬江漢
源内が秋田藩に西洋画を教え、そこで学んだ小田野直武が司馬江漢に西洋画を教え、
おそらく西洋画をほとんど観ていない司馬江漢にこんな絵が描けた。

聞いた話しでは落語にまで影響を及ぼしていたらしい。
讃岐の出だけれど、常に源内を描くドラマは江戸出身であるが如くの口調で話しているのが可笑しい。
逆に江戸の粋な風情とは源内から始まって、それがいつからか定着してしまったかも知れない、とは飛躍し過ぎか?

カテリーナの2月1〜3日の鹿児島、福岡、大分公演は、様々なステージをやってきた中で、僕にとって生涯忘れることの出来ない公演となった。

九州
もちろん昔の懐かしい顔にも沢山会えたが、知らない人からも沢山声をかけられ、「来て良かった」「言い表わせないほど感激した」などと賛美の嵐だった。
それは決して我々の鍛錬の賜でも無ければ、その日の演奏が格段に良かったわけではないと思う。むしろ九州のお客さんの食入るような目と耳と、ストレートな反応に我々が触発され、かつて無いほど演奏の精度を引上げてくれたのだと思う。
それはまるで音が真綿の中に染みこんでいくような、そんな光景が目の前を過った。
なんだろう。一つには今回どの会場も古楽器に適したとても響きの良い会場だったのがあるだろう。古楽器の多くはそれ自体の音は小さく、場を響かせるようなパワーは無い。西洋の寺院、中東のモスク、あるいは王宮で奏でられたような優しい音色はその場の響きと共にあるべきだろう。このような場に続けて演奏できた事は賞賛に値する。
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また、九州の気質もあるのかも知れない。九州以外の人たちの前でも色々演奏をしてきたけれど、座長一座などで芸能に慣れている環境があるのだろうか、どう伝わっているのか、その拍手の仕方やタイミングでどう感じたのかがこちらに伝わってくる。それに答えるべく最高の音を提供しなければと一音に魂を込める。それがまた伝わり拍手の返しの相乗作用で更に高みに向っていく。それは結果、東京でも東北でも関西でも同じなのだが、九州人の前での公演は自信を付けるきっかけを作ってくれる事が多い。
そして今回福岡、大分はクラシック向けの会場だったが、そんな場所で我々の立ち位置が再確認できた。曲にもよるが、毎日同じプログラムでありながら、まったく同じ演奏がない。固定された譜面に書表わすことは意味がない、自由で何が起るか解らない、古楽器でありながら、ジャズやロックに近いスタンスを取っている。ある時は酒場の音楽、ある時は敬虔な信仰の音楽、ある時は西洋と相対する異民族の音楽、古楽器で蟻ながら色んな情景、色んな音が混在する、あらゆるジャンルにも属さないとんでもない合奏団と言わざるを得ない。それが伝わっているのが解るのが今回の大収穫だった。
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こんなに口々に「良かった、良かった」と言ってくれて、我々も本望だが、終ってから舞台に上がり、しばらく楽器の前から離れない多くの興味に満ちた人たちに囲まれて、楽器も本望だったろう。カテリーナに参加して47年、世界はまだこの面白さを知らない人だらけなわけで、もっともっと知らせていかなければならないという掲示を受けたような気持になった。クラシックでもロックでもジャズでもポップスでもない、古楽の世界はまだこの世に始ったばかりなのだと思い知らされた気分だった。

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来ていただいた皆さん、本当にあたたかな声援、ありがとうございます。
そしてサポートして頂いた、しょうぶ学園、前村さん、産の森の皆さん、鹿児島、福岡、大分の劇場の皆さん、まだまだ書ききれませんが、本当にありがとうございます。

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