Tessey Ueno's blog

古楽系弦楽器を演奏する上野哲生のブログ。 近況や音楽の話だけでなく、政治や趣味の話題まで、極めて個人的なブログ。

カテゴリ: 音楽

今日は毎年第一生命ホールで30年続続いている、山下洋輔ソロピアノコンサートに行ってきました。
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いやあ素晴らしかったです。80を超えたとはとても思えない演奏だと思います。
800席近いホール満員のお客様を前に、本当に自由に自分の弾きたい曲を好きな様に弾いているといった、トリオの頃のあの激しさを忘れてしまう様なロマンチックな選曲でした。

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3年前にも同じコンサートに来て何曲か同じ春のナンバーを聴きましたが、違ったアプローチで新鮮でした。柔らかく転がる様な音が束になって丸まってしなやかで、それが何重にも重なって、万華鏡でも観ている様な世界観がありました。特にアンコールの鳥の歌もとても良かったです。全体的に爽やかな春を感じました。
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終わってから洋輔さんにもお会いしたかったですが、さすがにこの人数では無理と悟り、帰って来ました。昔(コロナ前)なら楽屋の前に行って逢えたのですが。
隅田川の桜が満開で綺麗だったです。良い一日となりました。
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20歳過ぎた頃に作った、とある詩にインスパイアされて作ったピアノ曲。
初演から半世紀が過ぎて、連弾用のピアノ曲に改作したものです。

実際に連弾で弾いてみたい方は、こちらに連絡して下さい。 https://www.tessey49.com/contact

ミュージカル「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」とても評判良く、2年目で再演です。
今年はとちぎテレビの主催でとちぎテレビで放映もされます。
原作のいわむらかずおさんが亡くなられたばかりで、追悼の気持で精一杯心を込め気持を一つに稽古に邁進しています。
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25年版「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」ソング・アラカルトというプロモ的なものを作りました。
宇都宮文化会館大ホール公演事前動画。本番35日前のリハを歌を中心に録りました。
今回のリハは衣装も照明も生オケもなく、振付けも指導中です。写真は2年前の初演の時のもので、動画は今回のものです。歌を中心にアラカルトしています。
あらかじめ音楽を耳に馴染ませておいてから本番を観ると、より楽しく観られると思いこの動画を作りました。茂木の方々、栃木の方々の素晴しい歌声をお楽しみ下さい。
(YouTubeから入るとチャプターが付いて好きな歌にジャンプします。)





特に最後の「 ♫同じ夢の中で」はぜひ覚えていただき、ぜひ一緒に歌って下さい。
最後のゲネプロのアンコールの
「 ♫同じ夢の中で」のリハです。皆さんの思いが伝わってきます。

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「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」
原作・絵本:いわむらかずお
脚本/演出:江藤 寛 作曲:上野哲生
音楽総監督:黒子和志  副監督:豊田尚史  振付け・指導:小川和代
特別出演:村山哲也  小倉伸一  村山啓子  小川和代ジャズダンスカンパニー 
制作・出演:もてぎde演劇を創る会  代表:都野祐俊 
写真提供:鶴田さとみ  録音・動画編集:上野哲生


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とちぎテレビで放映もありますした。生演奏の小オケが付きます。
小林清美(Pf) 栗田智水(Fl) 大塚裕一(Perc) 八溝山アンサンブル





カテリーナの2月1〜3日の鹿児島、福岡、大分公演は、様々なステージをやってきた中で、僕にとって生涯忘れることの出来ない公演となった。

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もちろん昔の懐かしい顔にも沢山会えたが、知らない人からも沢山声をかけられ、「来て良かった」「言い表わせないほど感激した」などと賛美の嵐だった。
それは決して我々の鍛錬の賜でも無ければ、その日の演奏が格段に良かったわけではないと思う。むしろ九州のお客さんの食入るような目と耳と、ストレートな反応に我々が触発され、かつて無いほど演奏の精度を引上げてくれたのだと思う。
それはまるで音が真綿の中に染みこんでいくような、そんな光景が目の前を過った。
なんだろう。一つには今回どの会場も古楽器に適したとても響きの良い会場だったのがあるだろう。古楽器の多くはそれ自体の音は小さく、場を響かせるようなパワーは無い。西洋の寺院、中東のモスク、あるいは王宮で奏でられたような優しい音色はその場の響きと共にあるべきだろう。このような場に続けて演奏できた事は賞賛に値する。
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また、九州の気質もあるのかも知れない。九州以外の人たちの前でも色々演奏をしてきたけれど、座長一座などで芸能に慣れている環境があるのだろうか、どう伝わっているのか、その拍手の仕方やタイミングでどう感じたのかがこちらに伝わってくる。それに答えるべく最高の音を提供しなければと一音に魂を込める。それがまた伝わり拍手の返しの相乗作用で更に高みに向っていく。それは結果、東京でも東北でも関西でも同じなのだが、九州人の前での公演は自信を付けるきっかけを作ってくれる事が多い。
そして今回福岡、大分はクラシック向けの会場だったが、そんな場所で我々の立ち位置が再確認できた。曲にもよるが、毎日同じプログラムでありながら、まったく同じ演奏がない。固定された譜面に書表わすことは意味がない、自由で何が起るか解らない、古楽器でありながら、ジャズやロックに近いスタンスを取っている。ある時は酒場の音楽、ある時は敬虔な信仰の音楽、ある時は西洋と相対する異民族の音楽、古楽器で蟻ながら色んな情景、色んな音が混在する、あらゆるジャンルにも属さないとんでもない合奏団と言わざるを得ない。それが伝わっているのが解るのが今回の大収穫だった。
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こんなに口々に「良かった、良かった」と言ってくれて、我々も本望だが、終ってから舞台に上がり、しばらく楽器の前から離れない多くの興味に満ちた人たちに囲まれて、楽器も本望だったろう。カテリーナに参加して47年、世界はまだこの面白さを知らない人だらけなわけで、もっともっと知らせていかなければならないという掲示を受けたような気持になった。クラシックでもロックでもジャズでもポップスでもない、古楽の世界はまだこの世に始ったばかりなのだと思い知らされた気分だった。

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来ていただいた皆さん、本当にあたたかな声援、ありがとうございます。
そしてサポートして頂いた、しょうぶ学園、前村さん、産の森の皆さん、鹿児島、福岡、大分の劇場の皆さん、まだまだ書ききれませんが、本当にありがとうございます。

皆さま遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。家族3人皆元気でやってiます。
久しぶりに年賀動画を作りました。映像はNasaのものとVideo blocksを利用し様々なコラージュしています。
2作品あり、こちらは「新しい地球の夜明け」と題して、最後はあり得ない組合わせが待っています。


もう1作品は新年にちなんでポップな和歌の歌を聴かせます。実際には秋の歌が多いですが。2作品同時にFBはアップ出来ないので、こちらから


HPに今年の年賀画像、昨年の出来事、今年やってくる出来事、動画など、色々まとめています。ぜひこ、ちらもお寄りください。

生れて初めて書店に並ぶ本を書きました。ある程度決った筋道に則った企画(シリーズもの)の中での執筆ですが、皆さん、きっと不思議に思われるのは本職の西洋古楽器のジャンルではなく、「和の音楽」だという事です。
これは「イチから知りたい 日本のすごい伝統文化」シリーズの第5弾で「はじめての相撲」「はじめての落語」「はじめて茶道」「はじめての歌舞伎」につづくものです。どちらかと言えば小学校3年くらいから読める本で、全てカナが振ってあります。他のシリーズはすでに人気があり、子どもでもその道の専門家を目指すきっかけになったという話しも聞きます。
他の本と違って難しいのは、まず音楽というものを文章で伝えることです。他の4冊はせいぜい数百年の歴史で、言葉や所作、しきたり、伝統を伝えることですが、音楽、それも神話の時代から現代まで、貴族から武士から民衆から、歴史も解っていない子どもたちにも解るように何を伝えるかが大変な作業でした。広く漏さず伝えようとすると歴史の勉強ばかり伝えなければならず、何かをピックアップすれば、今度は載らなかったジャンルの方からのクレームに合うかも知れません。そもそも僕が書く以上は海外との楽器の伝搬などに触れたくなりますが、あまり突っ込みすぎると編集の方から「難しすぎ!」と直されてしまいます。「ドローン」や「即興」という言葉も説明が難しすぎるという事でカットされました。あと、ひと項目に書く字数は500文字くらいまでとの制限があり、一つの楽器を取ってもこの文字数に収まるほど浅くはないのです。
僕自身和の音楽に関して、箏曲など和の音楽のあるジャンルの作曲依頼はあるものの、学者ではないので全般を体系的に網羅することは出来ませんが、離れた位置から音楽というもの全般を見渡すことは出来るかも知れないと思い、執筆を引受けました。
足らないところはイラストなどで補ってくれますが、構成やデザインまでは関与していません。
難しい部分は編集の方で直してくれるのは良いのですが、意味が合っていても本来のニュアンスと違ってしまうのは避けられないところです。実際に言回しで、こちらが間違った認識を持ってると受取りかねない部分もありました。
それでも、この小さな本の中によくもこの和の音楽という広大なジャンルが納まったなと感心します。きっと他の人が書くより中東やルネサンス・西洋音楽との比較の話しが多いと思います。リュートやウードなどの話も出て来ます。ピタゴラスも安倍晴明も紫式部も童謡もYOASOBIも武満徹も登場します。
一般の音楽の先生が読んでも、初めて知ることも多いと思います。少し偏った入門書でありますが、QRコードでこちらの用意した音源やフリーの音も聴けます。生演奏もしています。本当は著作権問題がなければ本物の演奏や映像とリンク出来ればと思います。売れたら徐々にその辺りにお金をかければさらに良いものになると思います。
書店に並ぶと思いますので、皆さん、ぜひ一度お手にとって眺めてください。
8/26発売開始です。Amazonで1980円、このリンクから購入可能です。出版社:すばる舎
単行本:136ページ ISBN-10:4799112570  ISBN-13:978-4799112571

和の音楽表紙
和の音楽プレビュー

自然の中で音に耳をすます。音を探す。木や鳥たちと音で会話する。
そもそもこんなにアウトドアから縁遠い僕みたいな人間が、ミュージックキャンプなどと言うものをよくも参加し続けてきたことと思う。個人的な事を言えば子どもと話題を共有することはとても苦手で、10分と相手をしてあげる事も出来ない。そんなことを思いながら、ロバの音楽座も含め、40年以上この活動に関わってきた訳だ。
音楽は教えるものではないと思っている。これはロバの学校を始めた頃と変っていない。教えないが、音楽を楽しめる、わくわくさせる、まだ聴いたことの無いような音の世界を体験させる、音楽やクリエィティブな作業をを無性にしたくなる。そんな環境を作る事くらいなら出来る。ただそんな出合いの場を作りたい。主宰のがりゅうさんはもっと先の展望を見据えているだろうが、僕にとってはそれだけが精一杯なのだろう。
子どもは元々生れながらにして音楽家だ。無心で歌う子どもの歌は何者も敵わない。何も表現していないのに涙が出てくる。そのままでいてほしい。そんな子どもたちに刺激を与えるのは複雑だ。けれど放っておけば人目を気にし、一般的な子どもの集団の中に埋れてしまう。素晴しい個性が溢れている子どもも、ただの何処にでもいる大人になってしまう。それはそれで仕方のないことかも知れないが、大人になって様々な夢や興味から離れて行ってしまう事に何か空しさを感じる人が居るに違いないと思ってしまう。
禅の世界では「悟り」を求めるのに「赤子の心になれ」と良く言われる。結局人間は赤ん坊から大人になる過程で、社会や生きて行く中で、様々な余計なものを背負わなければならない。禅ではわざわざ大人になるために背負ったものを無にしろという。
音楽も似たところがある。
技術を学び、経験を積み、理論を学び、評価を受け、研ぎ澄まされた域に達すると、どこかに大事なものを忘れてきている。音を見つけることに喜び、声に出すことに喜び、音を発することに喜び、それに対して大事な事だとか、何かの為になるとか、意味をもたらさない事にこそ大きなフトコロがあり、全てを受入れてくれる。心の中になるもの、夢や生きがいなんてとても単純で、空っぽの中に描いた一つの線のようなもかもしれない。それは教えられないもので、自然の中に自由であって、それぞれが感じて悟るようなものかも知れない。
まあ、自転車を乗れるようになる時のように、最初はサポートやきっかけが必要かも知れない。でもそこから先は見よう見まねで覚えていくし、発見もしていく。ギターやパソコンを手にした青年が、教わらずとも勝手に音楽を作って行くのを見れば解るだろう。
ロバの学校は子どもたちに楽器づくり以外、ほとんど技術的なことは教えてはいない。ただただ「それでいいんだよ」「そのままでいいんだよ」と背中を後押ししているに過ぎないかも知れない。
この子どもたちから発する歓声は、様々な束縛から解き放たれた喜びの声なのかもしれない。
ロバの学校の最後の夜に行われる「ガランピー蔡」、それはそれぞれの参加者がここに何かしらの美しさを感じ、無心に声を出し、動き、確実に心を一つにして何かに向っている。その目的、意味はたくさんの言葉を使って後付できるかもしれないが、この読書の森でのロバの学校という素敵な空っぽの器が、その全てを受入れているからかも知れない。

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カテリーナ古楽合奏団は昨年50周年を迎えました。そしてなんとCD「ドゥクチア」から30年ぶりにNewCDが出来ました。
マスタリングは1996年発売のCD「Ductia」と同じ、レコード業界では巨匠と呼ばれる田中三一氏が担当、28年ぶりの再会。音の本質を知る彼の魔法の粉が、カテリーナ古楽合奏団のそれぞれのオリジナルな息づかいと微妙に絡み合い見事に仕上がった。

録音:あだち麗三郎 マスタリング:田中三一 録音場所:ロバハウス デザイン・テキスト:松本雅隆

CD「Ductia」は田島征三氏の幼少期を描いた映画「絵の中の僕の村」の全編を飾り、ベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞するなど話題を呼んだ。さてCD「祝祭」が人々の心の中に、そしてささやかな日々にどんな話題を巻き起こすのか 楽しみ。
CDは以下のページから購入可能。

小学校3年の教科書にロバの音楽座の「ハッピーソング」(詞:松本雅隆 曲:上野哲生)が載りました。教育芸術社のこの4月からの教科書で、なんと一番最初に載っている曲です。

この教科書を使っている学校がどのくらいいるのか解りませんが、少なくとも何十万人の子どもたちがこの曲を知ることになり、いつまでも歌い続けてもらい、ロバの音楽座の事ももっと知ってもらえると良いなと思います。

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高校2年の終わりに3年生を送る会にバンドで参加した写真が、卒業アルバムに載っていた。50年ぶりに見つけた。
当時エレキギターはグヤトーンのシャープファイブ(本当はフェンダーが欲しかったけど)。フルートがいるのでジェスロタルやハービーマンのナンバーをやった。
メンバーは右から民谷利通(Bass)、定村政裕(Drums)、後藤裕二(Flute)、上野哲生(Guit)

僕は高校2年から3年まで北九州在住、八幡高校に在籍していた。
この直後にクラシック専科の国立音楽大学に行くことになるので、180度違った生き方をすることになる。

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昨年開校式を行った那須塩原市の小中一貫校・箒根学園の新しい体育館がようやく完成し、校歌の校歌額が設置されました。(那須塩原市教育委員会の方から画像が送られて来ました)
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この学校がこの地に続く限り、この歌を歌い続けてくれるのかなあと、感慨深い気持になりました(不評でまた変ったりするかも知れませんが)。
昨年の開校式で、まだ覚えて間もない子どもたちの歌った校歌にオケ伴奏を乗せた動画をアップしています。まだお聴きでない方はぜひ。

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今年全てのステージが終わった。ロバのクリスマスは全12ステージ。全て完売。面白いように同じプログラムなのに毎回全く違うステージになる。
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これは毎度開場時間にタイムスリップし、微妙に違った世界を新鮮に創り出し繰り返す。そう、これはきっとパラレルワールドに違いない!僕らはこの平和で幸せな光景を何度も何度もその時のみの出来事で体験し続けているのだろう。

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栃木県茂木町を拠点に活動するアマチュア演劇団体「もてぎde演劇を創る会」は、結成10周年を記念し、来年3月に茂木と益子で脚本・演出:江藤寛 作曲:上野哲生、ミュージカル「奇蹟(きせき)の朝に…」を再演する事となりました。
2019年に大田原と茂木で上演して大好評を得て以来5年ぶりの再演となります。キャストにプロも一部加わって歌と芝居に厚みを加えていますが、初めて舞台に立つ人も多いのです。それでも言いしれぬ感動があり、昨年の作品も茂木、益子などのホールで4ステージくらい演ったのですが、噂が噂を呼び昨年もほぼすべて満席になるほどでした。
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脚本も詞も音楽も評判が良く、自信を持ってお薦めできる作品です。初演時のプロモーションビデオもあります。ミュージカルの様子と懸ける熱が伝わります↓。
 

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今年も、我らがダンスマスター・松本更紗の出演する北とぴあ国際音楽祭の寺神戸さん(指揮&Violin)のバロックオペラを鑑賞した。今年は「レ・ポレアード」というジャン=フィリップ・ラモー最後の作品だ。
とにかく素晴しい舞台だった。練習時間と衣装、舞台道具、舞台照明等にもっとお金をかければ更なる完成度の高い舞台になったと思うが、昨今の音楽事情を考えればこれが日本の現段階で出来る最高の舞台だと思う。
毎年の事だが、ダンサーの踊りは語り尽くせないほど素晴しい。バロックオペラはストーリー自体は5分くらいで語れる程度の内容だが、大半は叙情詩の歌と踊りで出来ている。ロマン派のオペラのように叙事や説明が歌になるようなことは多くはない。演奏、歌、踊りが比重としておおよそ1:1:1くらいの割合である。休憩を入れた上演時間が全5幕 3時間15分と。ワーグナーほどでは無くてもヴェルディやプッチーニなどのオペラよりは長い。
とにかく、その3割近くを4人のダンサー(当時は4人とは限らない)の踊りが占めているわけだから、もの凄く大きな比重だ。それは単なる動きでは無く、それぞれの拍の中で、まるで鳥が短く弧を描いてジャンプして木に止るまでの加速減速が音の減衰にぴったり合っていて、それが何とも言えない優雅さを出しているのだと感じた。それはオイリュトミーが音を表現するより遙かに(技術があるからだろうが)空気の流れに従順で、より音楽を視覚化してくれる。
申訳ない言い方だが、合唱団が賢明にぎこちなく動きを付けているが、それと対比して見てしまう。(合唱団は歌は素晴しいので。)
オーケストラは最も大変な役割だ。ほぼ3時間落さずに演奏するだけでも奇跡のような事だ。ホルンはピストンのないナチュラル管でこの作品を演奏するには至難の業だ。それを理解していないと音が外れたとかそちらの方に耳が行く人が多いかもしれない。それはラモーの斬新さから来るものもあると思う。
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今回、ラモーの素晴しさも新たな発見だった。実は僕が大学時代に中村太郎先生に付いて和声学を習ったのはラモーの和声理論だった。現代において一般的な和声理論はモーツアルトの時代くらいのものだが、ラモーはほぼバッハと同じ時代だ。ハーモニーが理論化された最初のものと言って良いかもしれない。なぜハーモニーが自然の生まれたか、そう言った事から始ったと思うが、二十歳前の僕にとって課題をこなす素材でしか無く、このラモーを実際に聴こうとまで興味が無かった。ただ音程と言うものに重力が存在し、この重力が一度不協和に緊張状態になり、それの安定して収る方向に終息するという、全ての西洋音楽の構造を感じ取った意味は大きいと思っている。
実際にレ・ポレアードでは前の和音の音が残り次の拍で解決するという「掛留音」が多く使われていたと思う。出来るだけギリギリまで安定させない意図だろう。この掛留の具合とダンスの終止感が絶妙で、4人のダンサーは恐らくそれを感覚的に受け止めて、終止音とダンスの終止が絶妙の具合で合う。ここが今回の公演で最も素晴しいアンサンブルと感じた。
後、オーケストラで特徴的なのはロマン派以降によく使う、一番派手な部分でストリングスが細かく低い音から高い音まで一気に駆上がる(ジョン・ウイリアムスでT・レックスがいきなり目の前に現れるときの効果に使う)衝撃波が押寄せるような効果を多用していた。こう言った映画的な効果音の様な使い方はあまりバロック時代にはなかったと思う。
とにかく曲が斬新で面白いものが幾つも有った。特に一幕の最後のContredanseと言う曲は、まるでムソルグスキーの時代かと思われるような音程感で、非常に奇妙な音楽で気に入った。とにかく全体は予想を裏切るような展開を見せる曲が多く、音楽だけを聴いていても飽きない。
 
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ソプラノとテナーは直線的な声でハモると素晴しい響きをする箇所が幾つも有った。ただバリトンからバスにかけての歌手は少しヴィブラートが強く、3度でハモるところがよく解らないところがあったが、これがロマン派だと思うとこんなものかと思うが、もう少しヴィブラートを抑えた線の細い表現をして欲しいところも幾つかあった。まあこれだけオケが埋めるように音を出している中ではそのくらい吠えないと声が伝わらないのかも知れない。
レ・ポレアードは玄人受けする作品かと思っていたが、初めてバロックオペラを聴く方々も楽しめる作品と思った。バロック以前の中世ルネサンス音楽を演る者(僕)としてはあまりバロックに接する機会は多くないが、この3時間15分を体験した後でも、すぐにレ・ポレアードを配信ダウンロードして聴きなおすほどの、インパクトの有る作品だった。
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早々と完売になってしまい、チケットを買えなかった方々は本当に申し訳ありませんでした。当日来ていただいた方々は本当にありがとうございました。楽しんでいただけましたでしょうか?
まさに50年の記念に相応しいコンサートになったのではと自賛しております。
カテリーナとしては通常のコンサートも正味(休憩を除いて)1時間40分ほどですが、同じ1時間40分とは思えないほどの密度の濃い内容で、しかも今回メンバー1名が急遽出演できなくなるという逆境の事態に、編成を組直しメンバーの気持が一つとなり結果最善の方向に持って行けたと思います。
メンバー、ゲスト、観客の皆さんを含め、この希少な形態のグループの半世紀をお祝する気持が、「祝祭」の名に恥じない結果をもたらしてくれたのではと思っています。
驚く事に一晩で体重が2kg減りました。汗をかいた分けでも無く、それだけエネルギーと集中力を使ったと言う事でしょう。
がりゅうさんは「古楽オーケストラが夢だった」と言っていましたが、実際には3人のスペシャリストが増えただけなのに、本当にオーケストラのサウンドになったのには驚きました。まだまだ可能性は無限にあるのだと思います。
個人的にはウードを手に入れ、初お披露目しました。トルコ製のウードはよく響き、本来の鉢(メズラブ)を使うと音が大きすぎ、曲によっては溶け込まないため、サズのピックを使ったりしました。でも響きはふくよかでフレットがないため自由な音程を出せ、70歳を過ぎての挑戦で、更に新しい世界が開けた気がしました。


23カテリーナ「祝祭」チラシ
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放送関係のスタジオ仕事ばかりのお知らせで申訳ないですが、今週日曜日から始るドラマ「セクシー田中さん」と言うドラマで演奏を頼まれ、Lavta、Saz、Santur、を弾いています。
 
昼はOL、夜はベリーダンサーに変身するというドラマらしく、ダンスの伴奏かと思いきやそれは本物のアラブ音楽奏者でやるそうです。こちらの音はどうやらペルシャ料理店の背景音楽に使われるらしいです。予想に反してジャズ風なフレーズが多かったです。音楽は日向萠さん。

ダルブッカと言う言葉が日常的に使われているのが、何とも可笑しい。
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