Tessey Ueno's blog

古楽系弦楽器を演奏する上野哲生のブログ。 近況や音楽の話だけでなく、政治や趣味の話題まで、極めて個人的なブログ。

タグ:リュート

僕には5人の妻がいる。5人とも正妻だ。最近6人目の正妻を迎えた。6人目はまだ迎えてから2年しか経っていない、新婚だ。
どの妻もとても可愛いくてとてもチャーミングだ。それぞれの得意な事は限られているし、全く性格が違うので、誰かの代わりは務まらない。役割分担はとても上手くできているし、互いに嫉妬する事もない。
最初の妻は西欧の血を引く、日本生まれの来たプサルテリゥーム、通称プサルテリーと呼んでいる。とても優雅で繊細だ。指でどこを弾いてもとても純粋で透明な、決して肉感的にならない人間離れした響きを発する。

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2番目の妻は生粋のトルコ生まれのサズ。正式な名前はバーラマと言う。プサルテリーとうって変わってとてもキレが良くシャープでとてもリズミカルだ。激しく情熱的にもなるし、大草原や砂漠など地平線に沈む陽が似合うようだ。

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3番目の妻は西欧、特に英仏伊で人気の高いリュート。日本生まれだが、とても気位が高く、気難しいところがあるが、プサルテリーと比べるともっと肉感的で温かみがある。ふくよかな低音と伸びのある高音が魅力的だ。

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4番目の妻はイランから来たサントゥール。2本の鉢で弦を叩くのだが、それは繊細なものからアジタート(決然とした)な音まで多様な美しさと香りと個性を醸し出す。後にピアノに変わっていく楽器なだけに、ダイナミクスとサスティーン(余韻)、繊細なトレモロが持ち味だ。

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実は最初の妻を娶る前に実は妻を一人亡くしている。英国の血を引き日本で生まれたシターンだ。40年くらい前には最もよく良く弾いた。小柄だが、サズと同様リズミカルで爽やかに響き、プサルテリーと同様その頃を共に歩み、一つのスタイルを作って来た。ただ、ドローン弦を作っていたため様々な調性に対応出来ず、次のリュートに変わって行った。時代が経つにつれて響板も凹み音はビビつくようになり、第一線から消えていった。構ってもらえなくなると途端に機嫌が悪くなり、あらゆるところが破損していった。ついに響板は割れて自ら命を絶つ結果となってしまった。
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スチール弦で高音の伸びが良かったが、その役割は5番目の妻のジュラに変わった。ザズの兄弟でとても小柄で機動性があり、様々な調性に対応出来た。
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妻たちの寿命は短いので、プサルテリーは3人目、サズに至っては5人目、サントゥールは3人目、リュートもジュラも 3人目、常に若返りをしている。
若い方が良いかと言うと、見た目は新しくて良いが、特にプサルテリーやリュートの様な響板に薄いスプルースを使ったものは(日本での産みの親は同じだが)、初々しい頃はなかなか良く響いてくれないが、なぜか5年くらい経っと本当にキラキラした豊かな音色に変貌する。当初は慣れて来ただけかと思ったが、やはり熟れた魅力を醸し出す様になって来ている。
正妻同士は仲が良く嫉妬したりしないが、同じ兄弟同士の嫉妬は激しい。新しい妻が来て、そちらを構ってばかりいると、途端に機嫌が悪くなり響かなくなる。調弦もすぐ狂うし、嫌がらせとしか思えない様な仕方のない音色を出す。
今回こんな話をするキッカケとなったのも、新しいリュートに代ってからずっと構ってあげられなかった先代のリュートが、自殺をしてしまったからだ。管理も悪かった所為もあるが、響板に直付けになっているブリッジが剥がれ、全部の弦が完全に外れてしまった。これはもう個人のレベルではどうにもならない。産みの親の所で直してもらうかなのだが、(元々楽器の値段は西欧ベースと中東ベースではかなり差があるのだが)修理費はおそらく新しいサズが買えてしまう。値段を価値とするなら正妻たちの価格はかなり不平等にできている。もちろん楽器の値段で音色が決まるわけではない。
みんな寿命は長くはない。扱いも丁寧でない事もあるが、僕の要求が時に激しい事も多く、物にもよるが15年を超えると音が良くても楽器自体が傷だらけになって来る。響板の剥がれ、割れなどが頻度を増してくる。だったら古いものを大事に直しながら使うことより、次の世代にバトンタッチしていく事も大事な事だ。冷たいと思われるだろうが、結局一人で愛でるだけの妻たちではないので、それを聴いてもらい多くの人たちとの世界観を共有させると言う大きな務めがある。それが偏らないためにそれぞれ役割の違う妻たちがいるわけだ。
最初に話した通り、最近6人目の妻、アラビアからやって来たガタイの大きなウードが加わった。
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低い音で他の妻たちにはない肉感的で、情熱的で、官能的な面もある。口笛や歌と同じ様にフレットが無いから音と音の間を自由に飛回ることができる。最近ウードをフィーチャーした映像動画を作った。ぜひその音色をじっくり聴いて頂きたい。https://youtu.be/lSQ38Z0DEnE?si=yewE5u3Y_S-onIds
この役割の妻は初めてではない。同郷の出身でラウタと言う、もう少し音の高い愛人がいた。この人とは今もたまに逢っているが、ウードに比べるとやや線が細く、それはそれで良いところはあるが、出番は減ってしまった。たまに弾くだけなのに、あまり機嫌が悪くならず、クールな関係を保っている。
他にイラン系の三味線の先祖、セタール。響板部分が皮で出来ているタール。正妻では無い愛人だが、どれも個性的で唯一無二の世界観がある。
不謹慎にもこんな美しい妻たちを侍らせて、一人だけを選べなかったかと言うと、どの妻も万能ではないからた。
例えばヴァイオリンやピアノだと一人で色んな表現が出来てしまい、ある意味万能と言える。ならヴァイオリンやピアノで良いではないかと言うだろうが、それぞれの正妻たちの個性の豊かさは比べものにはならない。
コンサート中、例えば瞑想的なプログラムしかしないとか、激しい即興のみで終わるとか、単一な色合いなら一人で充分だろう。だが、一つの世界だけでは満足出来ないのは,色んな色彩、色んな世界、色んな表現をしたいからだ。
今後、生きているうちに妻の数はまた増えるかもしれない。でも正妻達はいつも可愛がっているから、いつもいい音で鳴いてくれる。自分が自分であり続けられるのはこの妻たちが居るお陰だ。

NHKアニメ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」の音楽でサントゥール、プサルテリー、リュート、サズ、など様々な楽器で演奏していますが(作曲は未知瑠さん)、まさにこの作品のふしぎ怪しい世界観の音楽を、これらの楽器が影で支えているという事がわかる映像が、「東映アニメーション」のYouTubeにアップされました。


 
銭天堂のアニメは2020年の6月に始り、今年で3年目に突入します。その間原作が全国学校図書館協議会・選定図書。2022年、第3回「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」で第1位を獲るなど、話題騒然でした。
 
この映像は2月の終りに収録しましたが、CDにもなり、今回で3回目の録音です。コロナ禍でもあり、他のミュージシャンとまったく顔を合せなかったのですが、他にも面白楽器の強者が揃っているなあと思いました。
放送時間が変更になり、NHK Eテレにて 4月8日より毎週金曜 午後6:40からの放送です  

HPに私の弾く弦楽器を動画で紹介するコーナーを作りました。
とりあえず、プサルテリー、サズ、リュート、ラウタを即興演奏を交えながら、楽器の成立ち、調弦、奏法、上野がこの楽器を演奏する意味などを伝えます。また旋法音楽の自由性、仕組にも触れています。
今後更に楽器は増やしていきます。
私が特に言いたい事は、これらの楽器は私はほぼ自己流で、伝統や文化、民族性をほとんど受継いではいません。それは西欧のクラシカルなピアノがアメリカリ渡り、黒人のジャズに変って演奏されていくのに等しい、楽器とはそういう自由なものだと言うことです。
 
tessyHP

プサルテリーとリュートの一人演奏「夏の小人」です。(+Cello Pizz)
河原を散歩していると小人たちが草むらの間を小走りに忙しそうにしているので、せっかくなんで何か一曲聴かせようと思って作った曲です。
せっかく作っても、大雨が降った後はとんと見なくなりました。
 

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Queen→ペルシャ→日本について、多くの方が興味を持ってくれたみたいなので、図に乗って続編を話したくなった。
僕はペルシャ=西アジア地域は音楽家にとって最も重要な場所と捉えている。世界の楽器はあらゆる地域で自然発生的に生れているが、現代に至る重要な楽器の元は、多くはこの地域から生れていると言って良い。

先ず、この地域が如何に文化文明的に優れた人たちであるか知ってもらいたい。
皆さんはソクラテスやユーグリッドみたいなギリシャ文明をローマが受継ぎ、そのまま西洋に文献が残ったと思っている人が多いのではないか?
実は初期キリスト教徒からギリシャの書物を受継いだのはササン朝ペルシャで、ペルシャ語に翻訳され文化資産として受継がれていった。元々高い文明を持っていたペルシャの学問に融合し取入れられた。
この頃はまだペルシャ人の多くはゾロアスター教だった。
時を経て7世紀くらいにイスラム教=アラブが台頭してくるとペルシャに侵攻し、多くのペルシャ人はイスラムに改宗されたが、逃延びたゾロアスター教徒たちはインドや長安の都まで逃げ延びた。一部日本にまで来たことは前回お話しした。
イスラム化したペルシャはギリシャ文明もペルシャ文明も吸収し、元々あるアラブ文明を組合わせ、天文、医学、科学、思想、音楽まで含む全ての文明をまとめ上げた。全てはアラビア語に翻訳された。

その頃のヨーロッパは無法地帯で、ローマは時代と共に荒れに荒れた。キリスト教の様な啓示宗教(簡単に言えば悪いことをしちゃいけませんという宗教)が必要だったと思う。それによって秩序が保たれ、今のヨーロッパが形成されていった。
その文明の拠所にしたのが西欧の起源と言うべきギリシャ文明だったが、アリストテレスもプトレマイオスも全てアラビア語から翻訳された。12世紀、十字軍とアラビアが戦っている頃の話だ。
この話は一般の西洋史の本には絶対に出てこない。
以降、西洋は世界に侵攻しアラブ世界をも支配下に置いてしまう。まあ世界はご覧のような力関係でバランスが取れてしまった。

西欧がアリストテレス等の書物を知ると同時に、楽器や音楽の形態や理論も流れていった。これがカテリーナ古楽合奏団の演奏する古楽の時代で、ロバの音楽座が使っている楽器にも関係する。

結論から言えば現代の優れた楽器の基本形態は、殆どがペルシャ近辺で生れている。
ギターのように胸に胴体をあて、(右利きの場合)左手で弦を指板に押さえつけ、右手で弦を掻き鳴らす楽器は、何百年も基本的な構造がほとんど変わっていない。おそらく未来も生き続ける楽器の「種」であろう。
こういった弦を押えて音程を変えるギター系のシステムの最古のものは、ネックの曲がった古代ペルシアの「バルバット」という弦楽器とされている。それが東に伝搬したものは中国の「ピーパ」日本の「琵琶」。西に伝搬したものはアラビアの「ウード」西洋の「リュート」と変わる。この弦楽器の伝搬は、さながら現人類=ホモサピエンスがアフリカに住んでいた一人のイヴから始まり、その子孫が世界の至る所に流れていったのとよく似ている。
ギターはリュートの胴体を平らにしたもので、同じ血を分けた分家と言えるだろう。自然発生的な楽器も多々ある中、もし楽器というものにDNA鑑定が可能なら、この種の楽器の伝搬と影響を詳しく調べてみたい。
他にもこの土地から生まれた特徴的な楽器は打弦琴(サントゥール=西洋で鍵盤が付いてピアノに変っていく)、箱形琴(プサルテリーのような楽器=チェンバロの前身)、タンブール(後にマンドリンや三味線に展開していく)、壺太鼓(ダルブッカ)とあるが、実は全て僕の得意なものばかりがここから生まれている。
さらに弓奏の楽器(ヴァイオリンの元)や笛系(これは自然発生的なものとの区別は難しいが)を挙げ出すときりが無いが、少なくとも数学・科学などの高い学問から作られる楽器は相当質の高いものが出来ていたに違いない。

ぶっちゃけた言い方だが、もしペルシャが存在しなかったら、ブライアン・メイやジミー・ペイジはギターというものを演奏していなかった。ビートルズもセコビアも違った表現媒体の音楽となり、20世紀の音楽シーンは大きく様変りをしていたろう。

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このペルシャで楽器を発明した人たちはどんな人たちだったんだろう。ここからは僕の空想の世界になる。

イエスの降臨を予言した東方の三博士の話でも有名なあの聖職者たちのことをマギという(単数形はマゴス)。この人たちはゾロアスター教の聖職者階級で、天文、医学、呪術、幾何学に優れ、ペルシャ文化の礎となっている。マギはマジックの語源でもあるところが興味深い。
西洋音律理論の基盤を作ったと言われるピタゴラスは、30際の頃から約30年にわたって世界各地を放浪することになるが、よくマギとの接触の可能性を言われている。

このギターの先祖を始め優れた楽器の発明者達は「マギ」だったのではないか?
ピタゴラスが、世界各国を廻ったときに様々な世界の楽器に興味がなかったはずはない。ゾロアスター教の聖数は「7」だが、ピタゴラスにとっても「7」は聖なる数で、西洋音階の基本数も「7音」。
おそらくマギたちの音楽理論も確立していて、その神秘的宗教奥義には、後の基督教や仏教同様、音や音楽そのものが単なる宗教効果だけではなく、神との橋渡しを担い、当然様々な楽器達が作られ試行錯誤し、淘汰していったことと思われる。
ピタゴラスが音律を調べたのは「モノコード(単弦の弦楽器)」と言われているが、音律を調べるなら2弦以上ある弦楽器だろう。ギターのように箱に駒のあるしっかりと固定された減衰音の長い楽器ではないと、共鳴の状態は解らない。
ピタゴラスの楽器は、教団の迫害、弾圧とともに消えてしまい、マギの実態も密儀で本質は外に漏らさない為、本当の事は何も解らない。しかし、今僕が弦楽器に夢中になるのはマギの仕業ではないのか?
マギがいなかったら世界の音楽はまた違う方向に行っていたかもしれない。そんな魔法使いのような影響力の強い人々に敬意を表して、自身のレーベル名にも「MAGI」の名を使わせてもらった。

インドに渡ったゾロアスター教徒=パールシーの末裔にフレディ・マーキュリーや指揮者のズービン・メータがいる。
長安の都までやってきたゾロアスター教徒たちの一部は日本に来て優れた建築などに相当貢献している。「日本に来たペルシャ人」などでネット検索をかければ、親切な歴史愛好家がかなり詳しく教えてくれる。
ここに全てを書き表わすことは出来ないが、マギの末裔はとてつもなくエネルギッシュな印象がある。智恵もあり徳もあり一筋縄ではいかない彼らの生命力は、多くの日本人の僅かな血の一部として活き?づいているのではと思ってしまう。

フレディはイギリスに渡った時ずいぶん差別されたらしいし、日本も渡来人は随分と差別されてきた歴史があるらしい。
でも歴史を紐解けば全く逆な立場だった。数百年前まで西欧は後進国だったのだ。差別したり争ったり、やれ制裁だ、移民だ等と言合っている輩の何と多いことか。
少なくともどんな民族でも何万分の1かは共通した血が流れている可能性があると言うことを忘れてはならない。

5月17日のコンサートからもう3週間経とうとしています。個人的には今年で40年でやってきた事になります。当時僕は一番若かったけど、この8人のメンバーでは僕は3番目に歳を取っていたことに驚きました。
少年の頃からロックに浸り、現代音楽や電子音楽、民族音楽を経てカテリーナに飛込んだ僕は、確かに個人的に様々な音楽に手を染めるものの、やはり戻るところは古楽の世界なのです。
で、今回特に思ったのは、正確に言うと自分は古楽が好きなのではなく、自分たちの演る古楽が好きなのです。

再び11月4日に、今度は本拠地「ロバハウス」で2ステージ演ります。

ロバハウスの小さな空間の中で8人のシェフたちが腕を振い、皆さんの目の前で最高の音の素材を料理します。
何時もこのフルメンバーが揃うわけではないので、ご興味のある方はぜひお聴き逃しのないよう。

11/4(日)  13:30〜 16:30〜
カテリーナ古楽合奏団
「中世ルネサンス音楽会」
出演:松本雅隆、千葉潤之介、上野哲生、岡田啓、斉藤和久、長井和明、松本更紗、蔡怜雄(ゲスト)
会場:ロバハウス

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ほんの少しだけですが、僕が古楽器演奏で参加したアニメ「終末のイゼッタ」のDVDとCDが出たようです。
音楽担当の未知瑠さんがインタビューの中で、僕のリュートやサントゥール、プサルテリーを起用したことについて語っています。
アニメ音楽界に新星現る『終末のイゼッタ』劇伴担当 未知瑠インタビュー

アニメの中では台詞に被って解りにくかったですが、CDでは恐らく台詞も無いので、良く聞えてくるのでは無いでしょうか。楽しみです。
因みにiTuneStoreで「終末のイゼッタ」を検索すると、以下のとラックに僕の演奏が確認できました。
2.週末のイゼッタ(サントゥール)
7.フィーネ愛のテーマ(プサルテリー)

12.夜明け前(リュート)

 終末のイゼッタ(iTubeStore)
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